

あの日、夢洲(大阪・関西万博)で叶わなかった想い。その約束を果たすため、私は新幹線で東京へ、そして武蔵野の面影を残す八王子の丘へと向かいました。万博の熱狂から始まった、私なりの「リベンジ」の記録。八王子うかい亭ならではの圧倒的な雰囲気と、五感を揺さぶる美食の数々を、写真と共に詳しくお届けします。

【八王子うかい亭について】
武蔵野の面影を色濃く残す、八王子の小高い丘。

そこには、時を止めたかのような静寂の中に佇む、一軒の豪商の邸宅があります。

「八王子うかい亭」。

1974年以来、鉄板料理の頂点として君臨し続けるこの場所は、単なるレストランではありません。和の建築美と西洋のアール・ヌーヴォーが溶け合い、美食と芸術が共鳴する「食の美術館」です。

今回、私はこの場所を訪れるために新幹線で東京へ、そして八王子へと降り立ちました。すべては、あの夢洲(大阪・関西万博)から始まった物語を完結させるため。その感動のすべてを、ここに詳しく綴ります。
【旅のプロローグ・夢洲から八王子の丘へ】
私が「八王子うかい亭」を目指したきっかけは、2025年に開催された大阪・関西万博(EXPO2025)に遡ります。
万博会場、天皇・皇后両陛下もご臨席されたEXPOホール「シャインハット」の隣、最も格式高いエリアに位置した「うかい亭 大阪(レイガーデン)」。この「うかい亭 大阪」を支えるのは、日本を代表する名店「銀座 うかい亭」の精鋭メンバーたちでした。連日満席で、私もその門を叩くことが叶わなかった場所です。
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「いつか、その源流へ―」。その想いが私を突き動かし、八王子のホテルからタクシーに乗り込みました。

タクシーの運転手さんも「誕生日に友人に招待されて行ったことがありますよ」と誇らしげに語り、道中では北島三郎さんの大邸宅を案内してくれるという、八王子ならではのサプライズも。

期待に胸を膨らませながら、漆黒の夜に浮かび上がる美しいネオンの通路へと導かれました。
【美術館のような静謐。美しき「桜」との邂逅】

駐車場に降り立つと、そこには凛とした空気。

スタッフの方々の温かな出迎えに導かれ、池の鯉が悠々と泳ぐ庭園を抜けて豪華な入り口へ。

待合室では、香り高いジャスミンティーが供されます。

ふと視線を上げると、至る所に「想像の象」のモチーフが。

かつて迎賓館や豪商の家であったというこの建物は、幾つもの待合室があり、その一つひとつが美術品に彩られています。

【世界を魅了したガラスの輝き】
席へ案内される道すがら、私は足を止めずにはいられませんでした。通路に展示されていたのは、ビーズフラワーデザイナー・下永瀬美奈子氏の傑作「桜(2023年)」。

ヴェネチアの「第7回ヴェニス ガラスウィーク」で最高位「ヴェネチア財団賞」を受賞したこの作品は、1500mmもの幅があり、ガラスビーズと光が紡ぐ繊細な輝きは、まさに圧巻。伝統的な日本の建築美の中に、ヴェネチアの息吹が溶け込む姿は、八王子うかい亭が歩んできた歴史そのものを象徴しているかのようでした。これらの展示は美術館と同様、季節の移ろいに合わせて定期的に掛け替えられています。訪れるたびに新しい芸術との出会いがある―。それもまた、この場所を何度も再訪したくなる大きな理由の一つなのですね。
【五感を研ぎ澄ます。うかい特選牛ディナーの幕開け】
案内されたのは、選ばれし者だけが座ることを許されるかのような、重厚なカウンター席。

今夜いただくのは、「うかい特選牛ディナーコース(18,700円)」。そして、その一皿一皿に魂を吹き込む「ペアリングセット(11,000円)」です。ソムリエが厳選した5杯のワインと共に、物語が始まります。
【百合根のフラン × 黄金の泡】
まず届けられたのは、「シャンパーニュ アルノー・ド・シューラン ブリュット レゼルヴ」。

シャンパーニュ地方南部の斜面で大切に育てられた葡萄の、細かな泡立ちと苺のような華やかな香り。

合わせる前菜は、「百合根のフラン」。

洋風茶碗蒸しという言葉では片付けられない、滑らかさと深み。スプーンを入れるたびに溢れる旨味の凝縮に、思わず目を閉じます。

【ヒラメのマリネ × 二つの白ワインの対話】
続いて提供されたのは、「ヴィオニエ・ヴェルジェ・オ・シュッド 2023」。

自然派ならではの独特な色合いと澱、そして野生味のある香りが、素材の輪郭を浮き彫りにします。

さらに、日本ワインの誇り「千曲川 シャルドネ 2024」が登場。長野県小諸市、樹齢30年を超える葡萄から生まれたこの白は、輝くレモンイエローが美しく、グレープフルーツからピーチへと移ろう香りの変化に驚かされます。

料理は「ヒラメのマリネ」。カラスミの塩気とコクが、シャルドネのピュアな果実味と手を取り合い、口の中で「日本」というアイデンティティを奏でます。
【鉄板の魔術。鰆と特選牛、そして情熱の「紫鈴」】
ここからはシェフによるライブパフォーマンスの始まりです。

【あんこうと鰆。冬の贅を尽くして】
目の前で焼き上げられる「あんこうのソテー」。表面はカリッと香ばしく、中は驚くほどジューシーな仕上がりです。

本来、メニューでは「地蛤のヴァプール ~クラムチャウダー~」の予定でしたが、この日は嬉しいサプライズが。運ばれてきたのは、芳醇な香りを纏った「タラバガニのクリームスープ」。

ひと口運べば、タラバガニの濃厚な旨味が凝縮されたスープが、喉を優しく、しかし力強く通っていきます。蛤のチャウダーも気になっていましたが、このスープのあまりの完成度に、一瞬で「今日、ここに来て良かった」という気持ちに変わりました。

次に現れたのは、鮮やかなクラッシュアイスの上に並んだ「鰆」。

ニンニク、タイム、白ワイン、そして赤ゆずこしょうを効かせたバターソースが、熱い鉄板の上で軽快に弾けます。

皮目はパリッと、身はふっくらと蒸し焼きにされた鰆。

そこに「娃久菜」のシャキッとした食感と、爽やかな柚子の香りが重なり、口の中で春の訪れが弾けるようです。

そして、この絶妙なタイミングで供されたのが香ばしいバゲットでした。 鰆の旨味が凝縮されたソースを、バゲットにたっぷりと染み込ませていただくと……。最後の一滴までが芸術的な味わいに変わり、メインのお肉を前にして、すでに至福の絶頂に達してしまいそうでした。

ここでソムリエが選んだのは、アメリカの銘醸地サンタ・バーバラの「Au Bon Climat Chardonnay」。バニラやクローヴの香りが、鰆の脂と赤ゆずこしょうのスパイスを優しく包み込み、えもいわれぬ安心感をもたらしてくれます。
【うかい特選牛サーロイン・味の芸術】

いよいよ、今夜の主役「うかい特選牛サーロイン」が姿を現しました。

まずは、調理前のお肉の美しさを。

きめ細やかなサシが、光を浴びて宝石のように輝きます。

鉄板に触れた瞬間の「ジューッ」という音、そして立ち上る芳醇な香り……。

この絶頂に合わせるのは、フランスの「オ・フィル・デュ・タン・ルージュ」、そして最後を飾る最高の一杯「2021 紫鈴 rindo (KENZO ESTATE)」。

ナパ・バレーの奇跡とも呼ばれるこのワインは、深紅の色彩の中に熟成感と気品が満ちています。

シェフから「万博期間中は、ここ八王子のスタッフも銀座へ駆けつけ、一丸となって『うかいの心』を守っていたんですよ」という熱い舞台裏を聞きながら味わう「紫鈴」は、これまでのどのワインよりも深く、心に染み渡りました。
【豪商の息吹を感じる「至高の個室・カウンター席」】
八王子うかい亭では、少人数から家族連れまで、それぞれのシーンに合わせた最高の空間が用意されています。

1名〜3名の場合は、職人の技を間近で楽しめる、重厚なメインカウンター席へ。

4名以上の場合は、趣の異なるプライベートな個室が利用可能です。 今回、特別に各お部屋を撮影させていただきましたが、そのバリエーションに驚かされました。

鉄板を囲むように椅子が配置された、会話が弾む「U字型鉄板の個室」

目の前にパノラマの鉄板が広がる「横長スタイルの個室」

少人数家族にぴったりの、温かみのある「4名用個室」

など、どのお部屋も美術館のような装飾に囲まれています。
※お子様連れの方への注意点
落ち着いた空間を提供する八王子うかい亭ですが、ご家族での利用も非常に大切にされています。12歳以下のお子様が同席される場合は、年齢を必ず予約時に伝えるか、ネット予約の場合は備考欄へ記入する必要があります。こうした細やかな配慮が、すべての方にとっての「至福のひと時」を守っているのですね。

今回は一日の最後の時間帯に予約をさせていただいたこともあり、食後、他のお客様が帰られたタイミングで店内の様子を撮影することができました。

普段は多くのお客様で賑わう名店ですが、この静寂に包まれた空間を写真に収められたのは、まさに「最後の客」だけの特権。もちろん、お店へのリスペクトを込め、他のお客様のプライバシーに配慮し、誰もいなくなってから細心の注意を払って撮影させていただきました。

この美しい静寂が、写真を通じても皆様に伝われば幸いです。
【甘美なる余韻。デザートラウンジでのひと時】
鉄板の興奮が冷めやらぬまま、席を移してデザートタイムへ。うかい亭では、お食事の後のデザートは、ゆったりとしたラウンジや窓際の席でいただくのが「うかい流」です。

【パティシエ特製、選べる3種の極上スイーツ】

メインの余韻に浸りながらラウンジへ移動すると、そこにはパティシエ特製のデザートメニューが待っていました。以下の3種類から好みのものを選べるスタイルです。

- モンブラン(うかい亭 定番) 香り豊かな和栗を贅沢に使用した、ファンも多い一品。上品な甘さが食後にぴったりです。
- 焼きたてのワッフル オーダーを受けてから焼き上げる、外はサクッ、中はふわっとした食感。こだわり抜いた極上のハチミツと共に。
- 季節の一品 その時期にしか出会えない旬のフルーツなどを使用し、パティシエが感性を注ぎ込んだ限定デザート。
【デザートを引き立てる至福の一杯】
スイーツのお供に欠かせないドリンクも、八王子うかい亭ならではのこだわりが詰まっています。
- 八王子のアイスコーヒー(大和田・珈琲実験室) 良質なコロンビアとペルーの豆を深煎りし、富士山の地下水を使用して淹れられた一杯。非常に芳醇で、雑味のないクリアな風味が喉を潤します。
- ブレンドコーヒー
- 紅茶(ストレート・レモン・ミルク) ※ホット・アイスから選択可能。
私は今回、迷わず「和栗のモンブラン」と「アイスコーヒー」を選びましたが、目の前に運ばれてきた瞬間の香りは今も忘れられません。

私は窓際の特等席で、「和栗のモンブラン」を選びました。

甘さを極限まで抑え、栗本来の香りを引き出したクリーム。その内側には、サクサクのメレンゲと冷たいバニラアイスが隠れています。

「珈琲実験室」が富士山の地下水で淹れたという芳醇なアイスコーヒーを啜れば、贅沢の極みのような夜が完成します。

また、共に供された「お水」の美味しさにも驚き、スタッフの方にお尋ねしたところ、近隣の山の上流から引き込んだ非常に質の良い水を使用しているとのこと。ミネラルたっぷりの清らかな味わいが、濃厚なスイーツの後の口内を優しく整えてくれました。

お土産には、「アトリエ うかい」の焼き菓子を。自分自身のためだけでなく、家族や日頃お世話になっている大切な人へ。この場所で味わった至福の時間の「記憶」を、香ばしいお菓子に託して持ち帰る―。それは、この素晴らしい体験を締めくくる、最高のお裾分けとなるでしょう。
【最後に、人生の記憶に刻まれる「うかいの心」】
お会計は3万円を超えましたが、そこには価格を遥かに超える「体験」がありました。

物語のある「空間」、最高を追求した「料理」、そして人の温もりに満ちた「おもてなし」。

これら3つが揃って初めて、「非日常」という名の魔法にかかることができるのだと感じました。
八王子の丘の上で、あの日夢洲で叶わなかった夢を上書きした、最高の一夜。

人生を振り返ったとき、きっと私はこの夜の「紫鈴」の香りと、シェフの笑顔を思い出すことでしょう。
【八王子うかい亭―店舗情報】
| 所在地 | 〒192-0043 東京都八王子市暁町2-14-6 |
| 電話番号 | 042-626-1166 |
| 営業時間(平日) | 11:30~16:00 (13:30 L.O.) / 17:00~21:30 (19:30 L.O.) |
| 営業時間(土日祝) | 11:30~16:30 (14:00 L.O.) / 17:00~21:30 (19:30 L.O.) |
| 定休日 | 火曜日・水曜日(不定休あり)、年末年始 |
| 決済方法 | 現金、クレジットカード可(電子マネー・QR決済不可) |
| サービス料 | 13% |
| 公式サイト | 八王子うかい亭 公式HP(予約もこちら) |
| アクセス | 八王子駅よりタクシー10分 / 八王子ICより車で5分 |
【駐車場】
八王子うかい亭は、公共交通機関(八王子駅からのタクシー等)はもちろん、車での来訪もスムーズです。
| 専用駐車場完備 | 広々とした専用駐車場が用意されています。 |
| 利用料金 | お食事をされる方は無料で利用可能です。 |
| 安心のポイント | 駐車場からエントランスまでのアプローチも美しく、車を降りた瞬間から「うかいの世界観」が始まります。 |

※お酒を楽しまれる場合は、代行サービスやタクシーの利用をおすすめします。
【地図】
【まとめ】
自慢のうかい特選牛や新鮮な魚介類、そして旬の食材の数々を五感で食す―。それこそが「八王子うかい亭」が誇る鉄板料理の醍醐味でした。

しかし、今回私が心から感動したのは、料理の味だけではありません。 日本の建築美と西洋の美術品が融合した物語のある「空間」、季節の命を吹き込む最高の「料理」、そして何より、人の温もりが伝わってくる「おもてなしの心」。

この3つの要素が重なり合った時、食事は単なる摂取ではなく、一生消えない「記憶」に変わるのだと、改めて教えられた気がします。
あの日、夢洲の万博会場で叶わなかった想いを胸に、新幹線で八王子の丘を目指した私の「リベンジの旅」は、これ以上ないほど幸せな形で完結しました。

八王子うかい亭―。 それは、人生の節目に、あるいは大切な誰かと共に、何度でも帰りたくなる場所。 皆さんも、大正ロマンの薫るこの迎賓館で、時を忘れる至福のひと時を過ごされてはいかがでしょうか。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。 下記に、万博の思い出や今回の旅の関連情報もございますので、ぜひあわせてご覧ください。




