

これは、万博184日間のうち、たった1日だけの奇跡の物語です。予約困難な『Dialogue Theater いのちのあかし』で、私は幸運にも、わずか1人しか選ばれない対話者になりました。この記事では、入館から対話の様子、そして対話者だけが知る特別な舞台裏まで、その全貌を余すところなくお伝えします。

【シグネチャーパビリオン『Dialogue Theater いのちのあかし』について】
『Dialogue Theater いのちのあかし』は、カンヌ映画祭でグランプリを受賞するなど、世界的に活躍する映画作家の河瀨直美氏がプロデュースするパビリオンです。

このパビリオンは、「対話」を通じて世界の「分断」を明らかにし、解決を試みる実験場として作られました。

奈良と京都の廃校舎の資材を再利用した建物や、毎日変わる184種類のテーマなど、独自のこだわりが詰まっています。
【予約なしでの入場方法】

「静けさの森」にあるイチョウの木が、『Dialogue Theater いのちのあかし』のシンボルツリー。

ここを目指して進むと、タイムスケジュールが掲示されています。

自由入場枠は16時30分~16時50分のみ。それ以降の時間は「予約をしていないお客様」という欄がありますが、実際は予約で埋まっているとのことでした。

予約なしで行くなら、16時半がおすすめです。

タイムスケジュールを確認したら、隣のEntrance前に移動して待機します。

【予約なし待ち列から入場し、本日のテーマを確認】

廃校舎を再利用した建物は、懐かしさと温かみを感じさせます。

中へ進んでいくと、入り口で「対話カード」を受け取ります。このカードには、その日のテーマが書かれています。全部で184種類あり、毎日が「人類史上、はじめての対話」となるというコンセプトにワクワクします。

この日、私が受け取ったテーマは、「余計なお世話と思ったけれど、余計じゃなかったお世話はありますか?」。

そして、私のカードには幸運にもイチョウのスタンプが押されていました。これは、150人の中からたった5人だけが選ばれる、対話者になれる印です。

【ホワイエでの対話者選定】

建物の中を進むと、開放的で温かみのある「ホワイエ」に到着。

150人全員がこの部屋に入り、数か所に設置されたモニターで説明を聞きます。

スタッフの方からイチョウのスタンプが入った5人が呼び集められ、本日のテーマについてそれぞれ話をしました。

私が本日のテーマ「余計なお世話と思ったけれど、余計じゃなかったお世話はありますか?」と万博での体験を交えて話したところ、それが皆さんに喜ばれ、代表に推薦してもらえました。こうして、私は対話者として選ばれることになったのです。

【「人を殺そうとしている」— 対話の始まり】
私以外の149人はシアターに入り、私は一人別室で説明を受けました。ルールは、挨拶や敬語は使わず、10分間対話をするというもの。SNSでの公開に同意するサインもしました。

撮影禁止のシアターに入ると、来場者が見守る中、最上段からマイクのあるモニターへ。足元のライトに合わせてゆっくり進み、10分間の対話が始まりました。
スクリーンの向こう側に映し出されたのは、悲壮な表情の男性。彼が口にした衝撃的な一言に、私は言葉を失いました。「人を殺そうとしている」と彼は言いました。病気でどうしようもなくなった両親を殺そうとしている、あなたならどうする?と問われました。
私は、同じ立場ならそうするかもしれないと、彼の気持ちに寄り添いました。すると彼は、私自身が命を絶とうと考えたことはないかと尋ねてきました。私は、生きる意味を感じられなくなった過去を正直に打ち明けました。そして、同じように悩む人には「頑張って」とは言わず、その人に合った場所を一緒に探すことが大切だと伝えました。彼は「そう思う」と頷き、生きがいを感じるのは「ありがとう」と言われた時だと、自分の気持ちを素直に話しました。
【10分間の対話が教えてくれたこと】
10分間の対話が終わりを告げると、スクリーンにはエンディングムービーが映し出されました。対話者の席はスクリーンに向かって一番左の最前列に用意されており、私も座って150人全員で観ました。
河瀨直美総監督らが撮り下ろした6つのムービーのうち、この日上映されたのは、うつ病を乗り越えた方のメッセージ。訪れるたびに異なる映像に出会えるのも、このパビリオンの魅力の一つです。

対話後、私は対話の相手にメッセージを書きました。「生きていればつらいこともあるけど、あなたにとって心地いい場所はきっとあります。今日は本当にありがとう!」。このメッセージはSNSで共有される可能性もあるそうです。

手紙で思いを伝えることもできるので、さっそく書いて翌日投函しました。

【半月後に届いた、奇跡の手紙】
半月が経ち、もう返信はないかと思っていたところ、郵便受けにイチョウのスタンプが押された封筒が入っていました。すぐに『いのちのあかし』からだとわかりました。封筒を開けると、中には対話者からの手紙が入っていました。

手紙には、私が「子どもの頃に自転車で色々な場所に行った話が印象的だった」と書かれていましたが、私はそのような話をした記憶がなく、少し勘違いをさせてしまったかもしれません。実際は、大人になってうつ病を経験し、気分転換のために自転車で山まで行き、山道を歩いた話をしたのです。10分という短い対話の中で、私の言葉が何らかの形で相手の心に届いたのだと感じました。
このパビリオンでの体験は、私の心に深く刻まれ、万博での最高の思い出となりました。
【体験後は「森の集会所」へ】

体験後は、ガラス張りの「森の集会所」で来場者同士や自身との対話を楽しめます。

ここは自由入場なので、予約なしの方も入ることが可能です。

ここでは「香りを用いた共感体験」など、シアターでの対話とは異なる体験ができます。

もし事前に立ち寄れば、その日のテーマを知ったり、対話の予行演習ができたりしますよ。
【シグネチャーパビリオン『Dialogue Theater いのちのあかし』 基本情報】
| 場所 | シグネチャーゾーンX08 |
| 所要時間 | 約55分 |
| 入場方法 | 事前予約あり。当日登録や自由入場枠もあります。 |
| 開館時間 | 9:30~20:55 |
| 詳細情報 | 公式サイトでご確認ください。 |
【地図】
【まとめ】
『Dialogue Theater いのちのあかし』は、単なるパビリオンではありませんでした。知らない誰かと、人生の核心に触れるような深い対話をする場所。それは、自分の内面と向き合う貴重な時間であり、万博でしかできない特別な体験でした。対話者になりたくて何度もリピートする人が多いという話にも納得です。ぜひ皆さんも足を運んでみてください。そして、もしイチョウのスタンプが押されていたら、それは人生を変えるかもしれない対話のチャンスかもしれません。
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